元気だけが取り得と言っても過言ではないような父が、あまりにも不安そうな顔をしていることに気がついた私は、一体父に何が起こってしまったのかと、大いに心配になってしまったことがありました。これは以前、父がはじめての大腸の内視鏡検査を受けると決まったときのことでした。父が自分の身体に何か異常を感じたとか、健康診断でひっかかったという理由ではなく、会社の健康についての取り組みの一環でした。父の勤めている会社は、様々なイベント企画を提供している大手企業で、その企画の1つに、中高年の健康への意識を高めようという活動があったのです。具体的には、いくつかの会社や施設に足を運び、そこに医師や専門家を招いてセミナーや講演会を開き、健康についての知識を深めていただこうというものでした。それにあたって会社では、まず自分たちが健康でいなければならないという話になり、社員全員が人間ドッグを受けようことになったのだそうです。

その中で父は、はじめての大腸の内視鏡検査も受けることになったのでした。大腸の内視鏡検査というと、肛門から専用のカメラを挿入し、そのカメラで大腸の中を観察することによって、大腸に異変がないかどうかを調べることができるものです。この多くは、大腸がんについての発見に役立っているそうです。そんな大腸の内視鏡検査を受けることになった父は、とても不安そうな顔をしていたのでした。父がこんなにも不安になる理由は、幼いときに経験したあることがきっかけで、トラウマを持っていたからでした。

それは、浣腸です。まだ父が小学生だったとき、便秘が続いて腹痛がなかなか治まらず、浣腸をしたことがあったそうです。浣腸をすると、もちろんさらに腹痛は悪化し、排便によって解消されます。その浣腸というのも、その作用や目的は全く違いますが、肛門から薬を投与するというものでした。そのため父は、大腸の内視鏡検査で肛門にカメラを入れられるということに、大きな不安を感じてしまっていたのです。そんな父の表情は、いつもの元気な父の姿を思い出すことが出来ないほどでした。しかし検査当日、父は重たい足を上げて、はじめての大腸の内視鏡検査を受けに行ったのです。そしてその日の帰ってきた父の顔は、見違えるほど明るくなり、はじめての大腸の内視鏡検査をやり終えた喜びで溢れていました。いつもは元気な父も、このような顔をするんだなと初めて知った出来事でした。

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